共済団体、ついに公益の舞台から降ろされる!
2008年8月4日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
主席研究員 福島 達也

 

しばらく、このニュース欄をお休みさせていただき、いろいろとご心配をおかけしたようである。中には、活動をやめてしまったのかとか、担当する福島がやめてしまったのかというメールをいただいたこともある。 とんでもない。ますます活発に活動していた結果と申し上げたい。

というのも、積極的に地方からの依頼に応えて、講演活動をしたり、コンサルティングを依頼していただいた団体の総会、評議員会、理事会等への出席、さらに新しい本の執筆活動などなど、かなり激務が続いていたというのが最大の理由である。

それと、コンサルティング契約をいただいた団体から、貴重な情報は、契約をしている団体にだけ流してほしいという要望があったのも事実である。

そこで、考え方を変えて、事実はこの欄できちんと報告し、予想やテクニックに関しては、仕事をいただいている団体のみとすることにした。

よって、いろいろな問題をいろいろな角度から掘り下げていくことは、こちらでさせていただくことにしたので、契約をいただいている団体の皆様も、ぜひご理解いただきたい。



さて、復活の第一弾は、共済事業をしている団体に対する何とも悲しいニュースからだ。

共済事業というのは、偶然の一定の事故に備えるために、集団の構成員が掛金を出し合い事故が起きた人に共済金を支払うという保障事業のことで、非営利事業ではあるが、会員の相互扶助の理念に基づいて行われている共益的な活動のことである。

しかし、これは保険会社と違って、ほとんどは社団法人等の公益法人で運営されているので、今回の制度改革では、果たして共済事業は公益目的になるかどうかが、かなりいろいろなところで議論されていたのだ。

本年作られたガイドラインには、どのような事業が公益目的事業になるかどうか、チェックポイントまで上げて記されているが、具体的にこの事業はよくて、この事業はダメだというようなものは一切書かれていなかった。

だから、よいと思われている事業区分であっても、チェックしたところ、認定できる内容でないという事業もあるのが現状だったのだ。

さらに、ダメという事業が書かれていなかったので、まず無理だろうという団体までもが、公益法人を目指すことになり、「不認定激増!」という悲劇を生みそうな状況になっていたのだ。



そこで、政府もどうやら重い腰をあげることとなり、その第一弾が「共済事業は公益認定にあらず」である。

もちろん、噂だけでは混乱を増やす原因になるので、それをきちんと明記して、もっぱら共済事業をしている法人には、公益法人をあきらめてもらって、一般法人化を促そうというわけである。



その運命の決別は、7月18日の公益認定等委員会で出された「公益認定等ガイドラインの追加について(案)」に記されている。

どこに書かれているかというと、おもしろいことに、認定法第19条関係のところである。そう、収益事業等の区分経理のところだ。

認定法第19 条の「各収益事業等ごとに特別の会計として経理する」際の事業単位については、法人の収益事業等のうち、まず@収益事業とAその他の事業を区分し、次に必要に応じ、事業の内容、設備・人員、市場等により、更に区分することになるのだが、今回ガイドライン追加に当たって、「その他の事業」の具体例が初めて示された。つまり、公益目的事業にならない事業が、法律制定から2年を経て初めて例示されたということなのだ。

今までのガイドラインでは、公益目的事業にならないその他の事業というものは「法人の構成員を対象として行う相互扶助等の事業が含まれる。」としか書いていなかったのだが、それでも一向に共済事業や地縁事業、同業者的事業をしている法人が、公益認定を目指すことをやめないので、ついに明記することを決めたのだ。

そして、「例えば、構成員から共済掛金の支払を受け、共済事故の発生に関し、共済金を交付する事業、構成員相互の親睦を深めたり、連絡や情報交換を行ったりなど構成員に共通する利益を図る事業などはAその他の事業である。」と断言してしまった。

区分経理の項目とはいえ、ここに、共済事業はその他の事業であると書かれた以上、どこの公益認定員会でも判断は同じになる。

つまり、共済=非公益目的。



このガイドライン追加案は、ほぼ確定しているので、どのようなロビー活動をしても変えることはもはや不可能である。

こんな形で、法律制定後初めて公益認定されない事業が発表されることになるとは、専門家も含めてだれも予想していなかったはずだ。



公益認定を目指す共済事業法人にとっては、あまりにも悲しい夏である。

そして、この後、これ以外にも公益目的事業になれない事業が明らかになるであろう。おっと、これは予想だから、この欄には書けない・・・か。

非営利法人総合研究所

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